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ぶらり鷹巣山

紫陽花と山野草



   平野 正 (遠州屋薬局)

EM t-hirano@gray.plala.or.jp






鷹巣山山頂より  (木々の間に見えるブルーは海です)

毎年同じ時期に行く山がある。
7月の下旬から8月の上旬にかけて行くところが浅間山から鷹巣山のコースである。
ここは春は湯本から登り山桜を、そして夏は浅間山の紫陽花を楽しめるところだが、そのほかの草花も豊富で、植物図鑑を持っていって、行くたびに新しいものを覚えてくる。


昨夜は特別暑く、充分睡眠を取れなかったが、東京発、6時58分の臨時列車「下田行」に乗れたのがラッキーで、快適な車中で一眠りすることができた。
平塚で目が醒めると、右手の窓に大きな、夏の、黒い富士山が見える。目覚めに日本一の山が、手に届くほどのところに見えたことに、ちょっとした幸せを感ずる。
小田原についたが、ここでも直ぐに発車する登山電車に、しかも座って乗ることができた。

特に暑い今年夏、しかも土用に入り、熱中症で倒れる人のニュースも度々聞くので、今回はあまり無理はしないようにしようと思う。
いままでこのコースは10回ほど、あちこちの登山口から登っているので、様子はわかっている。

去年は8月6日、午後一時頃、旧東海道の畑宿から登り、大平台に降りたのだが、山道から大平台のコンクリートの道路に出たときは、真夏の直射と道路からの反射の熱で、火照った体がなおさら熱くなり、冷房の効いたコンビニで氷を食べても、涼しさも、冷たさも感じられないくらいだった。
今年は比較的傾斜の少ない大平台からの逆コースを取ることにした。


出山鉄橋

登山鉄道の沿線はアジサイが植えられていて、6月から7月の始めの夜間はライトアップするとのことで、さぞすばらしい景色だと思うが、今回はその紫陽花は終わっていた。
今年は大平台の駅を出たのが8時45分で、すでに強い日差しがあったが、去年の真昼の日差しと照り返しまではない。でも、大型の観光バスが連続して通過するので、暑さだけでなく排気ガスの臭から、早く逃げ出したい思いで10分程歩き、どうやら鳥居のある登山口につくことができた。


さて、いよいよ登山道。木陰もあるので楽だろうと思っていたが、やはり坂道になるとあせが噴出してくる。
後をついてくる女房が、「汗は沢山出るとしょっぱくないのね」と言うほどのあせをかいたようだ。

2時間半、冷房の効いた電車の中でおとなしくしていた皮下に溜まった水分が、我先にといった感じで、とめどなく汗となって出てくる。


暑いと手足を動かしているエネルギーが頭にまで上って来て、特に足のエネルギーが少なくなり、頭はボーッとし、足は踏ん張りがきかない。
頑張って30分歩いた所で一休みし、水分を補給したら、それまでに比べると体は軽くなった。一汗かくと体はかるくなる。

この道は下った事しかなかったが、今回は逆コースの登り、しかも暑さの中での登りなので、傾斜は少ないはずなのだがきつい。
そして大平台からの道が終わり、湯本からの主街道になると、今度は木陰もなく道は急になる。
炎天下を一歩一歩登る。800m位の山なので暑い風が吹くことが多いが、今日は心地よい風が吹いている。

今日は不思議なことに未だ人と会っていない。
いつも暑い盛りでも何人かとはすれ違う。特に暑い今年の夏のせいなのかもしれない。


紫陽花の道



さて、浅間山の頂上に着くと、其処からいよいよお目当ての紫陽花の道が1kmほど続く。

ひと一人がやっと通れる位の所もあって、太り気味の小生は、そこではいやでも花に触れてしまい、ちょっと申し訳無さを感じ、気が引けた。

淡い紫、濃い紫、青の濃い額紫陽花、色の薄い日本紫陽花と色とりどりの花の中を通る。
これがこのコースの目的の一つなのだ。

背が高い紫陽花の木陰に入り、また眼から花の美しい刺激が入り、また元気がわいてくる感じだ。
夕立は毎日あるわけではない。それでもこの炎天下、萎れてもいなく花も葉もぴんとしている様は健気だ。



紫陽花街道の楽しみが終わると、鎌倉古道の石畳の残骸がある鷹巣山の登りに掛かる。ここは距離は短いが急で苦しい。しかし道端には色々な山野草がある。


此処で初めて人に出会った。
汗もかかず、涼しげな顔をして、急坂を汗だくだくで息を切らして登り終えようとしている私達に、「こんなに下ると後は登りがあるのでしょうね」、と声をかけてきた。


うつぼ草

先方も中年の夫婦連れだったが、バスで湯坂道入り口まできて、平坦な道を此処まできただけなので、まだ余裕があるのだろう。
「此処からはどの方向に行っても下りですよ。紫陽花が綺麗で楽しみですよ」、と言ってすれ違った。

鷹巣山に近づくと海も見える。 駒ケ岳が雄大に見える。空の色、雲の色、木々の緑の濃淡と景色を見回しても良い。道端の山野草を楽しむのも良い。


去年ここに来たとき、植物図鑑のハンド版を持参し、靫草(うつぼぐさ)を覚えた女房が、「矢を入れ背中に背負う物を靫と言うのよ」、などど頓珍漢なことをいうので、「それは箙(えぴら)だ」、などと話をしたところで、うつぼ草はちゃんと生えていた。


しもつけ草


「紫の細かな花が上向きに沢山付いた花で、栃木県の都市みたい名前のがあったけど、何だっけ?」、と聞くので、「栃木のどの辺だ」と問い返すと、「栃木の辺りを昔なんと呼んだの?」と聞き直すので、「下野だろう」と言うと、「そうそう、そのシモツケ草よ」、なんて会話をしたことを思い出させるシモツケ草もあった。(参照)


とらの尾

ししうど

おおはんごん草




虎の尾を踏む、というのは大変危険な事をするたとえだが、その「とらの尾」も沢山ある。
いまの阪神タイガースの尾を踏んでも、猫の尻尾を踏むようなものだが・…




五条の橋の欄干にかぶせてある擬宝殊に似たギボウシもある。
シシウドの一本は背が高く、白い花を誇りげに見せている。写真を撮るのにちょっと立ち止まり、また炎天の道を進む。

山ゆりもある。小学生の頃は小金の雑木林にも山ゆりは沢山あった。だからほかの山野草もあったにちがいない。開発も良いが、昭和30年代半ばから、松戸から急激に自然がなくなったことは、子供心にも寂しさを感じた。


今度はおおはんごん草の集落にはいる。

さらにすすみ飛龍の滝に下る森林地帯に入るが、途中から涼しげな水音が聞こえてきた。滝の下の沢を渡り少し登って滝の下に出る。やっと水辺に出たのだが、ここまで猛暑の中を3時間歩いたせいか、体はまだだるい。



あとは畑宿までの急な下りを、バス停まで下る。
この坂には秋になると紫の花をつける葛の蔓が絡みあっている。あと1時間半歩けば、奥湯本から北條早雲ゆかりの早雲寺を通り、湯本まで行くが、今日は歩くのを止め、バスに乗ることにした。

バスを奥湯本入り口で下り、温泉一休で一時間露天風呂でゆっくりした。
なかなかの舞台のような風情のある風呂で(写真)、両脇の屋根のないところに露天風呂もある。
ここから須雲川に張り出していて夏の空、山の緑が一望でき、また川音も聞こえる。デッキチェアーにゆったりと坐って、疲れた体をほんとうにゆっくりさせることができた。

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なかば苦行のような山登りを終えた後で、夏の香りを存分に嗅ぎながらの風呂はまさに天国だ。
夏の山歩きは温泉つきにかぎる。
7月22日

飛龍の滝
鷹巣山周辺地図